低水準消毒薬であるヒビテン[クロルヘキシジングルコン酸塩]の作用機序、効能、使い方について解説しています。
ヒビテン[クロルヘキシジングルコン酸塩]:低水準消毒薬
ヒビテン[クロルヘキシジングルコン酸塩]は、低水準の消毒薬として皮膚や傷口などさまざま用途の消毒に使用されています。
消毒薬といえばエタノールやミルトン、イソジンなどが有名ですが、実は医療機関では10種類以上が使用されています。
消毒薬[販売名] | 消毒薬[一般名] |
---|---|
アセサイド | 過酢酸 |
ディスオーパ | フタラール |
サイデックスプラス、ステリハイド | グルタラール |
ホルマリン | ホルマリン |
テキサント、ミルトン、ピューラックス | 次亜塩素酸ナトリウム |
消毒用エタノール液IP | 消毒用エタノール |
イソジン | ポビドンヨード |
オスバン、ヂアミトール | ベンザルコニウム塩化物 |
ハイアミン | ベンゼトニウム塩化物 |
テゴー51 | アルキルジアミノエチルグリシン塩酸塩 |
ヒビテン、マスキン | クロルヘキシジングルコン酸塩 |
リバノール | アクリノール |
オキシフル | オキシドール |
これら10種類以上の消毒薬をどのように使い分けしているかというと、次の2つです。
- 何を殺したいか?[ウイルス?細菌?]
- 何に使用するか?[ヒト?物?環境?]
消毒薬の使い分け:①何を殺したいか?
消毒薬の対象は微生物ですが、微生物といってもウイルスや細菌、真菌などさまざまです。
これら微生物は消毒薬が効きやすいものもあれば、ほとんど消毒薬が効果がないものも含まれます。
一般的に、消毒薬に対する抵抗性は、
芽胞菌>ウイルス>結核菌>真菌>一般細菌
の順に強いとされています。
そのため、どの微生物に効果があるかで消毒薬は大きく3つに分類分けされているのです。
芽胞菌を含む全ての微生物に効果がある消毒薬が高水準消毒薬、ウイルスに効果がある消毒薬が中水準消毒薬、一般細菌にしか効果がない消毒薬が低水準消毒薬です。
先ほどの表を消毒薬の強さで分類分けすると次のようになります。
分類 |
消毒薬[販売名] |
消毒薬[一般名] |
---|---|---|
高水準 |
アセサイド | 過酢酸 |
ディスオーパ | フタラール | |
サイデックスプラス、ステリハイド | グルタラール | |
中水準 |
ホルマリン | ホルマリン |
テキサント、ミルトン、ピューラックス | 次亜塩素酸ナトリウム | |
消毒用エタノール液IP | 消毒用エタノール | |
イソジン | ポビドンヨード | |
低水準 |
オスバン、ジアミトール | ベンザルコニウム塩化物 |
ハイアミン | ベンゼトニウム塩化物 | |
テゴー51 | アルキルジアミノエチルグリシン塩酸塩 | |
ヒビテン、マスキン | クロルヘキシジングルコン酸塩 | |
リバノール | アクリノール | |
オキシフル | オキシドール |
消毒薬の使い分け:②何に使用するか?
消毒薬にはそれぞれ特性があり、何に使用するかでも使い分けを行います。
一般的に、効果が高い消毒薬ほど毒性が高いため使用できる範囲が狭く、効果が低い消毒薬は安全性が高いため様々な用途で使用されます。
高水準消毒薬=毒性が高い=用途が限られる
低水準消毒薬=毒性が低い=多用途で使われる
そのため、何に使うかを考えた場合、各消毒薬の特性を理解して、使い分けを行います。
消毒薬[販売名/一般名] | 手指 | 手術部位 | 創傷部位 | 排泄物 | 金属器具 | 非金属器具 | 環境 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
アセサイド/過酢酸 | × | × | × | × | ○ | ○ | × |
ディスオーパ/フタラール | |||||||
サイデックスプラス/グルタラール | |||||||
ホルマリン | × | × | × | × | × | × | × |
テキサント/次亜塩素酸ナトリウム | × | × | × | ○ | × | ○ | ○ |
消毒用エタノール液IP /消毒用エタノール |
○ | ○ | × | × | ○ | ○ | ○ |
イソジン/ポビドンヨード | ○ | ○ | ○ | × | × | × | × |
オスバン/ベンザルコニウム塩化物 | ○ | ○ | ○ | × | ○ | ○ | ○ |
ハイアミン/ベンゼトニウム塩化物 | |||||||
テゴ-51 /アルキルジアミノエチルグリシン塩酸塩 |
× | × | × | × | ○ | ○ | ○ |
ヒビテン、マスキン /クロルヘキシジングルコン酸塩 |
○ | ○ | ○ [粘膜×] |
× | ○ | ○ | ○ |
リバノール/アクリノール | ○ | ○ | ○ | × | × | × | × |
オキシフル/オキシドール | × | × | ○ | × | × | × | × |
ヒビテン[クロルヘキシジングルコン酸塩]の作用機序、特徴
ヒビテン[クロルヘキシジングルコン酸塩]は、一般細菌に消毒効果を示す低水準消毒薬です。
ヒビテンの有効成分はクロルヘキシジングルコン酸塩です。
クロルヘキシジングルコン酸塩は水溶液中で、プラスに荷電しています。
消毒対象となるMRSAや緑膿菌などの一般細菌は、菌体表面がマイナスに荷電しています。
そのため、プラスのクロルヘキシジングルコン酸塩がマイナスの細菌表面に作用し、細胞膜の破壊作用をもたらすと考えられています。
やっくん
ヒビテン[クロルヘキシジングルコン酸塩]は、陽イオンに帯電しているため、細菌表面に作用し細胞膜を破壊することで、消毒・殺菌作用を示します。
ヒビテン[クロルヘキシジングルコン酸塩]の効果、用途
ヒビテン[クロルヘキシジングルコン酸塩]は、手指や医療機器の消毒薬として、1962年に承認された薬です。
消毒効果に6時間ほどの持続性があるため、主に手術時の消毒に使用されています。
それぞれの使用部位によって適応濃度が異なります。
適応部位 | 濃度 |
---|---|
手指・皮膚の消毒 | 通常時 0.1%水溶液(30秒以上) 汚染時 0.5%水溶液(30秒以上) |
手術部位(手術野)の皮膚の消毒 | 0.5%エタノール溶液 |
皮膚の創傷部位の消毒 | 0.05%水溶液 |
医療機器の消毒 | 通常時 0.1%水溶液(10~30分) 汚染時 0.5%水溶液(30分以上) 緊急時 0.5%エタノール溶液(2分以上) |
手術室・病室・家具・器具・物品等の消毒 | 0.05%水溶液 |
産婦人科・泌尿器科における外陰・外性器の皮膚消毒 | ヒビテングルコネートのみ:0.02%水溶液 |
結膜のうの洗浄・消毒 | ヒビテングルコネートのみ:0.02%水溶液 |
低水準消毒薬に分類され、ウイルス類や真菌類には効果がない場合があるため、一般細菌に対して用いる消毒薬になります。
5%ヒビテン液とヒビテングルコネート液20%の違い
ヒビテンの有効成分はクロルヘキシジングルコン酸塩ですが、2つの消毒薬があります。
濃度が5%の5%ヒビテン液と、濃度が20%のヒビテングルコネート液20%の2つです。
しかし、この2つの消毒薬の違いは濃度のみではなく、添加物に違いがあるのです。
5%ヒビテン液 | ヒビテングルコネート液20% | |
---|---|---|
有効成分 |
クロルヘキシジングルコン酸塩 |
|
濃度 | 5% | 20% |
添加物 | グルコノ-δ-ラクトン ポリオキシエチレンオレイルエーテル イソプロパノール 赤色二号 香料 |
なし |
適応 | 手指・皮膚の消毒 手術部位(手術野)の皮膚の消毒 皮膚の創傷部位の消毒 医療機器の消毒 手術室・病室・家具・器具・物品等の消毒 |
手指・皮膚の消毒 手術部位(手術野)の皮膚の消毒 皮膚の創傷部位の消毒 結膜嚢の洗浄・消毒 産婦人科・泌尿器科における外陰・外性器の皮膚消毒 医療機器の消毒 手術室・病室・家具・器具・物品等の消毒 |
5%ヒビテン液には添加物として、界面活性剤のポリオキシエチレンオレイルエーテルを含んでいます。
これは、水道水で希釈した際の白濁を防ぐために加えられています。
しかし、界面活性剤によって刺激が強くなるため、ヒビテングルコネート液20%では適応のあった、「結膜嚢の洗浄・消毒」「産婦人科・泌尿器科における外陰・外性器の皮膚消毒」の適応が取れていません。
ヒビテン[クロルヘキシジングルコン酸塩]の使い方、注意点
ヒビテン[クロルヘキシジングルコン酸塩]を使用する際の注意点をまとめてみました。
- 長時間金属器具には長時間使用しない→腐食作用があります
- 汚れを取り除いてから消毒する→汚れがあると濃度が低下します
- 石けんや洗剤を十分に洗い流す→石けんの陰イオンとヒビテンの陽イオンによって中和されます
- 使用時、微生物の混入に注意する→消毒薬が汚染されます
- ガーゼや綿球調整時は、1日で廃棄する→綿球に消毒薬が吸着し、微生物の汚染例が報告されています
ヒビテン[クロルヘキシジングルコン酸塩]の使用期限
- 未開封時の使用期限:製造から2年
- 開封後の使用期限[原液]:製造から2年
- 開封後の使用期限[希釈滅菌後]:半年程度[使用時細菌の混入に注意]
- 綿球作成時の使用期限:1日